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『何者』  

『何者』
何者

朝井リョウの直木賞受賞作を映画化。就職活動対策のため集まった5人の大学生が、SNSや面接で発する言葉の奥に見え隠れする本音や自意識によって彼らの関係性が変わっていくさまを描く。就職活動を通じて自分が何者かを模索する学生たちがリアルな就活バトルを繰り広げる。


劇団ポツドール主宰の三浦大輔監督が演出。

数年前三浦監督が演出する舞台「裏切りの街」を観に行った。
徹底したリアリズムの中に潜む人間の欲望を浮き彫りにした、心にざくざくとナイフが突き刺さるような痛い作品だった。

ああ、この人はこんなシュールな作品を作るのか…
ふらふらと帰途に帰るさながら、その名前はしっかりと胸に刻まれた。

そして今作を三浦監督が手がけると知って、今どきの売れっ子俳優を並べた人気取り作品には成り下がらないことをどこかで期待し確信していた。

その期待は裏切られることなく、全く持って閉塞感たっぷりな作品を鑑賞することになる。

就活に揺れ動く若者たちの心の機微。
これは今も昔も大して変わらないんだが、今はそこにSNSが加わりより複雑化してしまう。

SNSにハマりすぎると、現実が遠のく。
現実が遠のくと、本来の自分を見失う。
分離すればするほど現況がますます不安定になる。

今ここを見失った若者たちの話。

みんなヨガをすればいいのに笑。
鑑賞中何度も思った。

ぶつかること、失敗することを怖がり、空っぽの世界で空回りする。
妄想が妄想を呼び何もかもが信じられなくなる。

SNSは私たちに、これまで手を伸ばしても容易に届かなかったたくさんの情報をいとも簡単に与えてくれる反面、リアルな世界からどんどん遠ざけてしまう弊害を生み出した。

今作から得られる教訓はさまざまだが、渦中にいる人物たちにその思いは果たして届くのだろうか。
これもひとつの空想の世界、いつでもリセットできる、自分はそこにはいない、などと軽く流されることのないよう願いたい。

主人公を演じた佐藤健のダメダメぶりは本当に見事だった。

るろ剣のときはあれだけのイケメンぶりに徹していたのに、みんなのハートをキュンキュン高鳴らせっぱなしだったのに、今作にはあのイケメンくんがどこにも見当たらなかった。一生懸命探したがだめだった。

全然かっこよくない…。

何が違う?

観賞後に気づいたのは目力だった。

今作には全く目力がなく、いつもおどおど何かを探していて不安げで。
心ここに在らず。

心がここにない人には目に力がない
→何かを探し彷徨いつづける
→ボンヤリしてる
→カッコよくない
→魅力的じゃない。

彼の演技力に感嘆しながらも、目力大事だなーとつくづく感じた。

私の心はここにあるか?
目の前にいる人との対話を大切にしてるか?

遠くに追い求めるのではなく、大切なものはいつも足元にある。

みんな一度は聞いたことのある有名な格言。
本当にその通り。

category: movie

『永い言い訳』  

『永い言い訳』
永い言い訳

人気作家の主人公幸夫は、突然のバス事故により長年連れ添った妻を失うが、妻の間にはすでに愛情と呼べるようなものは存在せず、妻を亡くして悲しみにくれる夫を演じることしかできなかった。そんなある時、幸夫は同じ事故で亡くなった妻の親友の遺族と出会う。彼と同じように妻を亡くしたトラック運転手の大宮は、幼い2人の子どもを遺して旅立った妻の死に憔悴していた。その様子を目にした幸夫は、大宮家へ通い、兄妹の面倒を見ることを申し出る。なぜそのようなことを口にしたのか、その理由は幸夫自身にもよくわかっていなかったが……。


『ゆれる』『ディアドクター』など、これまで濃密な人間関係を題材に作品を生み出し続けてきた西川美和監督。

彼女は、人間の心の闇やわだかまりを冷徹な視点から描きだす、私好みの監督だ。

本作は死者と残された者たちの絆とその不確かさを描いた物語。

秘密や嘘・本音を隠しながらも懸命に生きようとする人間を決して責めることはなく、人は時に愚かで間違えることもあるのだと温かく見守り、それでも人生は続いていき、そこに向き合ったものには贖罪や忘却が許される。

作り手の鋭くも優しいまなざしを感じる秀作だ。

主人公を演じる本木雅弘のだめっぷりが魅力的。
この人、本当にうまい。

また、演技だと感じさせない子どもたちの自然体には全くもって驚かされる。
そして、子どもだからこそ持つ純粋なエネルギーや輝きや眩しさに癒される。

ひとつひとつの言葉が心に刺さり、光や音が美しく舞う。
西川監督の世界観が全面に溢れた作品です。

category: movie

『scoop』  

『scoop』
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かつて敏腕カメラマンで週刊誌のエースだったが、今は借金まみれで芸能人のスキャンダルを意地汚く追いかける中年パパラッチ。そんな彼が新人記者とコンビを組むことになり、仕事への情熱を取り戻していく様を描く。


『モテキ』『バクマン』に続く大根仁監督の作品。

彼の作品はハズレがない。
今作ももれなくおもしろかった。

相変わらずテンポがよく、リアリティも満載。

今話題の週刊文春と重ねてニヤニヤしながら見入ってしまった。

パパラッチがどうこう言っても、そのネタを楽しむ側がいる限りその世界は成立するし、批判されようともそれもまたプロとしての仕事。

そこをうまく切り取って見せるのが大根監督の手腕といったところか。

福山雅治演じる中年パパラッチは、どんなに下ネタ連発しても悪態ついてもだらしなくても、やっぱりかっこいい。(別にファンじゃないけど)

で、終盤に迫るにつれどんどんかっこよくなっていく。(だからといってファンにはならないけど笑)

周りを固める共演陣が際立つキャラをそれぞれ愛おしく演じていたのもよかった。

そして衝撃のクライマックス。

最後はリリーさんにやられた。全部持っていかれた。
リリー・フランキー大好きなんだけど、この人いい人も悪い人もどっちもできる振り幅の大きい人。

今回はかなりキワモノ。
ほんとうまい。


本作は純粋な娯楽映画なので、特別深いテーマが潜んでるとか社会的メッセージなどはなく、否定も肯定もしない。解釈は観るものに完全に委ねられる。

その突き放した距離感もまたよし。
エンディングはただただ浸れる。

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『怒り』  

『怒り』
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現場に「怒」という血文字が残った未解決殺人事件から1年後の千葉、東京、沖縄を舞台に三つのストーリーが紡がれる群像劇で、前歴不詳の3人の男と出会った人々がその正体をめぐり、疑念と信頼のはざまで揺れる様子を描く。


最初から最後まで重く苦しい作品だった。

原作は未読。
なだけに、何かと比べる必要もなく、ただ2時間半「そこ」に集中した。

貧困・同性愛・沖縄…今の日本の縮図が「そこ」にある。

三つの時空間で展開するストーリーは決して交錯しない。

しかし、テーマは一貫。

「信じる」ことの難しさ。

タイトルは「怒り」だが、信じることを軸に、信じられなかった自分に対するうちに向かう怒りと、信じて裏切られた外に向かう怒りが描かれている。

目を背けたくなるシーンや知らぬ間に涙が溢れ出る場面が多いとても切ない作品。
でもこれが今の日本社会が抱える現実なのだと受け止めざるを得ない。

そして、普通の生活をしていながら一転狂気に豹変する犯人は日常のどこにでもいる、と知らされるとぞっとした。

『悪人』を超える衝撃作に、演じる俳優さんたちはどれほど追い込まれたのだろう。
想像を絶する彼らの演技は必見です。

台詞だけでなく表情や音での表現が豊かで細やかで、ずっしりと胸に刺さる作品。
内容を知った上でもう一度観返してみたい。

category: movie

『君の名は。』  

こんなにすごい作品だなんて、予告篇を観たときには予想だにしなかった。

よくある「入れ替わりもの」だろう。
タイトルも一昔前の映画と同じでイマイチ惹かれない。

…と、私の中では全く観に行く予定はなかったのだけど、いち早く本作を観た息子の鼻息の荒さと、日に日に高まる世間評とに後押しされて、久しぶりのお休みをこれまた久しぶりの映画鑑賞にあてることに。


『君の名は。』
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精緻な風景描写と繊細な言葉遣いなど、独自の世界観で国内外で高い評価を受ける、新海誠監督によるファンタジーアニメ。田舎町で暮らす女子高生と東京で暮らす男子高生が、心と身体が入れ替わる不思議な体験を通して成長していく姿を描く。


高校生の男女が夢の中で入れ替わるただのファンタジックな設定かと思っていたら、2人のピュアな恋物語が一つの街の危機という大きな物語と絶妙に絡みあっていく展開に。

その120分弱の尺の中に喜怒哀楽がたっぷり詰め込まれた作品だ。

不覚にもどきどき、わくわく、ハラハラ、そして何よりもキュンキュンした。

途中から急転するストーリー展開に誰もが目を離せず、斜め前のおじさんは何度もメガネを取っては涙を拭いていたし、ぽりぽりとお菓子を頬張り友だちと会話していた大迷惑な隣の男子高校生はいつの間にか無言で全く動かなくなり…
終映と同時に「すげえよかった。こんなにすげえ映画とは思わんかった。ほんとにすげえ。」と、「すげえ」を連発していた。

そう、ほんとに「すげえ」のだ。

今日も平日昼間ながらほぼ満席で老若男女さまざま、圧倒的な観客動員数というのもうなずけた。

ストーリーもさることながら、実写かと見紛う美しい背景描写が素晴しい。

新海監督は写実的な風景描写にこだわり、圧倒的なリアルを見せつけてくる。

光を反射する窓、跳ねる雨粒、揺れる木々の葉、陽の差す教室、染められた濃淡の空… よく知る日常の風景が驚くほど濃く鮮やかな形に彩られ、自分たちの住む世界はこんなにも美しかったのかと感嘆させられる。

美しければ美しいほど切なさは深まる。無常観たっぷり。

そんな世界に、RADWIMPSの楽曲のハマり具合はさすがだったなあ。

ジブリが少し陰を落とし始めた昨今、新しい才能の出現に心躍らせる人たちも多いことだろう。

日本のアニメーションが今後どのように変遷していくのか、また楽しみが増えました。


category: movie