yumi presents.

yoga & days…

~ Information~




『晴天の迷いクジラ』  

昨年の山本周五郎賞・本屋大賞第2位に輝いた『ふがいない僕は空を見た』の著者
窪美澄さんによる待望の新作。



仕事に追われ心を失いつつあることにさえ気づかない青年。
過酷な過去を背負う倒産寸前デザイン会社の女社長。
親の過干渉に苦しみ引きこもりとリストカットを繰り返す少女。

生きることに戸惑い 疲れ 壊れかけた3人のお話。



読み終えてしばらく放心。
前作と同じくなかなか感想がまとまらない。

一週間経ってようやく心が定まってきたので
流れ出る想いをそのまま素直に書き綴っていくことにします。

窪さんの書く作品は なぜこうもたくさんの切なさとやるせなさが渦巻いているのだろう。

ページをめくる手は重たいのに 先へ先へと急ぐ不思議な感覚。

主人公3人の息苦しさや温度・匂いといった空気感が生々しく伝わってくる巧妙な描写に
胸がどくどくと波打つ。

人間は弱くて残酷で複雑。

殺伐とした環境は人の心を蝕み 空虚なものへと追い込む。

言い換えるなら
生き生きとした人間関係なくして有意義な人生は送れないということ。

前作が「性」と「生」に真っ向から立ち向かった作品であるのに対し
今作は「人間関係」(特に親子)を克明に描いた作品。

そのどちらにも共通しているのは 
苦境に陥った登場人物たちの最後が「希望」で終わるという点だ。

それは夜空に輝く満天の星みたいにわかりやすい形ではなく
ぼんやりとしたわずかな光に目を細めるような儚げな陽炎みたいなもの。

がんばれよ!と強く背中を押すのではなく
何も言わずにただ寄り添ってくれる…
そんな押しつけがましさのない「生」へのエールがとても素敵。


窪さんの作品は「人生の重み」を見つめる視点と表現がすばらしく
その筆力の高さは惚れ惚れするほど。
言葉のひとつひとつを胸に沁みこませながら大切に読み進めていきたい
そう思わせる魅力的な文章ばかりです。

ちなみに大好きなデビュー作『ふがいない僕は空を見た』は今秋映画公開予定。
こちらも楽しみ。

category: book